睡眠時の歯ぎしりの原因と治療法を解説
「睡眠時の癖のようなもの」と思われがちな歯ぎしり。実際に癖に近いものなのですが、じつは口内の問題や心身の負担が原因になっているケースがあります。放置すると大きなトラブルになることもあるため、注意が必要です。
改善するには歯科での治療が有効な場合があります。こちらでは歯ぎしりの原因や治療法を解説していますので、お悩みがある人はぜひお役立てください。
睡眠時の歯ぎしりにはさまざまな原因がある
睡眠時に発生する歯ぎしりの原因は明確にはわかっていません。そんな中でも、大きく関係するとされているのは、以下の4つの要因です。
1. 噛み合わせ・骨格
歯の噛み合わせが悪いと歯ぎしりが発生しやすくなります。とくにほかの歯よりも高い歯があると歯が接触しやすくなり、歯ぎしりが起きる可能性が高いです。
加えて骨格に問題がある場合も歯が接触しやすくなり、睡眠時に気になって無意識に歯ぎしりをしていることがあります。
しかし、近年は噛み合わせ・骨格のみが歯ぎしりの原因になることは少ないという考えが主流です。
後述する複数の原因が関連して歯ぎしりが発生すると考えられています。
2. 口内の不快感
虫歯・歯周病・ドライマウスなどの症状があると、睡眠中に口の中がネバネバして不快感が生まれるでしょう。
それを解消するために口を動かし、そこから歯ぎしりをすることも多いです。
歯の治療で詰め物をした際の違和感や、子どもなら乳歯と永久歯が生え変わる時期のむずがゆさが原因で歯ぎしりをするケースもあります。
このような場合は一時的なもので、口内の変化に慣れてしまえば解消することが多いです。
3. ストレス
現代人の多くが抱えるストレスも歯ぎしりの原因。イライラしたり、不安になったりすると人の体には力が入ります。
そのときに歯も食いしばり、それが癖になって睡眠中にも発生し、歯ぎしりに発展するのです。
歯をこすり合わせることでストレスを発散していることもあります。
さらにストレスによる不眠や眠りの浅さも問題です。浅いノンレム睡眠時は歯ぎしりが発生しやすくなります。深く眠るためにアルコールを摂取することも、歯ぎしりを悪化させる要因です。
4. 生活習慣
日常生活での癖や喫煙・飲酒の習慣も歯ぎしりと関係しています。
たとえば、力仕事やスポーツをする人などは、力を入れたり集中したりすることが多いです。
そのときに自然と歯を食いしばる習慣ができ、それが睡眠時の歯ぎしりを引き起こしてしまうかもしれません。
アルコール・ニコチンの摂取も歯ぎしりを悪化させるといわれています。
しかし、飲酒や喫煙習慣はストレス発散に役立つ面もあるため、我慢しすぎてストレスを溜めないように調節することが大切です。
歯ぎしりの診断方法
歯ぎしりは無意識にしていることがほとんどで、なかなか自覚症状がありません。以下のような症状がある場合は歯ぎしりを疑い、医師に診断してもらいましょう。
歯ぎしりを疑うべき症状
- 寝ているときに口から音がしているといわれた
- ふと目が覚めたときに歯を食いしばっている
- 起きると顎の関節や筋肉が痛い
- 顎の筋肉が前よりも発達した
このような症状があったり、他人から歯ぎしりを指摘されたりした場合は要注意です。原因(歯の治療や久しぶりの喫煙など)が分かっていて、一過性のものであれば問題ありません。しかし、これらの症状が続くか、断続的でも長期間繰り返される場合は治療が必要な歯ぎしりである可能性が高いです。
歯科での歯ぎしり診断方法
歯ぎしりを疑って歯科を受診した場合は、問診での確認に加えて歯の状態をチェックします。
この時に歯の異常なすり減りや、顎の骨や筋肉の過度な発達が見られた場合は治療が必要です。
歯の状態は一般的な歯科健診でチェックします。
しかし、顎の骨や筋肉までは見ないことがほとんどです。歯ぎしりが気になっているのに歯科で指摘されない場合は、顎の状態も一緒に見てもらうように相談してみてください。
歯ぎしりが原因で発生する体のトラブル
歯ぎしりを長期間放置してしまうと歯や歯茎に負担がかかり、さらには顎、そして体全体のトラブルにつながることがあります。
詳しく見ていきましょう。
歯への影響
歯ぎしりをしているときは、驚くほど強い力で上下の歯を噛み合わせています。そのため、最初に影響を受けるのは歯です。
ギシギシと音がするほどすり合わせることで、歯が摩耗して小さく、脆くなっていきます。
突然歯が欠けたり折れたりするほか、冷たいもの・熱いものを食べた時にしみやすくもなるでしょう。
治療した歯がある場合、歯ぎしりによって矯正装置や詰め物が破損する可能性があります。
とくにインプラントは歯ぎしりに弱く、表面が欠けることや、ネジが緩んで外れる可能性も。高額で行ったインプラントが無駄になってしまうこともあります。
インプラントを行ったら歯ぎしりをしていないか十分に注意しましょう。
歯茎への影響
負担がかかる歯茎への影響も見過ごせません。高い負荷が歯から伝わる歯茎は、徐々に弱って歯周炎・歯槽膿漏・歯肉炎などのリスクが高まります。歯茎が軟らかくなったり痩せたりすると、歯並びもガタガタになっていくのです。
顎への影響
強く歯を噛みしめると、顎の関節と筋肉も動くことが分かると思います。歯ぎしりではこの顎の関節と筋肉を常に使っている状態になるため、痛みやこわばりが発生することが多いです。さらに悪化すると顎関節症を発症し、口の開閉に障害が出てしまうこともあります。
顎の筋肉が発達するほど歯ぎしりが続いていると、筋肉が外側に膨らみ、顔が大きく見えるのも問題です。若い人や女性はとくに気になる症状でしょう。
体全体への影響
軽視しがちな歯ぎしりという症状ですが、何年も続くと全身のトラブルを引き起こすことがあります。
- 肩こり・首こり
- 腰痛
- 腕のしびれ
- 全身の倦怠感
- 頭痛
これらは歯ぎしりが原因で発生する全身症状の一例です。原因不明だった不調が歯ぎしりの改善によって治ったというケースもあります。「たかが歯ぎしり」と思って放置せず、大切な歯と体を守るためにも治療を行いましょう。
歯ぎしりの治療方法は主に4つ
歯ぎしりの治療には主に4つの方法があります。原因や症状に合わせて複数の治療法を同時に行うことも多いです。
1. スプリント療法(ナイトガード)
歯ぎしりの治療として一般的なのは「ナイトガード」というマウスピースを装着し、歯が当たらないようにするスプリント療法。
歯をマウスピースによって保護できるため、歯ぎしりによる摩耗を防止できるうえに、顎にかかる負荷も減らせる方法です。
この治療法では、ナイトガードによって歯ぎしりの負荷を減らしている間に、原因を取り除いて歯ぎしりを治療します。
スプリント療法だけでも自然と歯ぎしりが改善することも多いですが、後述する歯列矯正や自分でもできる治療法を併用すると効果的です。
2. 嚙み合わせや歯並びの改善
歯ぎしりの原因が歯列不正にある場合は、矯正を中心とした治療を行います。矯正治療の内容は症状によって大きく違いますが、時間をかけてゆっくりと直すのが基本です。
なお、歯列不正は虫歯や歯槽膿漏によって歯が動くことで、大人になってからも発生します。子どもに限った治療法ではなく、大人の歯ぎしり治療にも用いることが可能です。
3. 睡眠環境の見直し
深く眠っているときは歯ぎしりが発生しにくくなります。よい睡眠のために睡眠環境を見直すことも歯ぎしりの治療として有効です。
- 枕を変える
- 入眠しやすい香りや音楽を用意する
- 眠る前のスマホをやめる
- 部屋の暗さを調節する
- 運動の習慣を取り入れる
など、自分にあった眠りやすい習慣を見つけてください。はじめやすい治療方法ですので、他の治療と併せて行ってみましょう。
4. 生活習慣・ストレスの解消
明確な歯ぎしりの原因がない場合は、生活習慣を見直すとともにストレスの解消をするのが有効です。
できるだけ規則正しい生活をし、喫煙や飲酒は控え、意識的に力を抜く機会を作ってみましょう。
歯磨きを徹底することも有効です。
口内に汚れが残っていると雑菌が繁殖しやすくなり、睡眠中の口内が不衛生になります。
粘つきが発生するとその不快感から歯ぎしりをしやすくなるので、丁寧な歯磨き習慣も身につけましょう。
睡眠時の歯ぎしりは放置せずに治療しましょう
人にいわれるか、歯科で指摘されないとなかなか気づけない歯ぎしり。
すぐに重大な影響がでるわけではないため、放置する人が多いですが、長期間の歯ぎしりはさまざまなリスクにつながります。
大切な歯を守り、長く自分の歯で健康的な生活を送るためには治療が重要です。
歯科で診断してもらえますので、気になったら後回しにせず相談してみてください。
この記事の筆者
いのうえまさとし歯科医院
京都の「いのうえまさとし歯科医院」はインプラントを得意とする歯科医院です。20年間で7500件以上の治療実績があり、大手インプラントメーカー2社の公認インストラクターである院長が、あらゆる症例のインプラントのご相談を承ります。
またマウスピース矯正、ホワイトニング、一般歯科など幅広く対応しております。
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