歯列不正とは?種類・症状・治療法を解説
歯の位置がずれる「歯列不正」を放置すると、食事がうまくできない、発音や呼吸に障害がでる、虫歯や歯周病になりやすいなどさまざまな問題につながります。種類や原因を知れば予防や治療法がわかるはずです。こちらでは歯列不正の症状や種類について解説しています。
歯列不正は遺伝的な要因に加え、子どもの頃の歯並びや癖が影響して発生することが多いです。
本記事では、とくに多い4つの歯列不正について解説し、治療方法や放置するリスクについてもお話します。歯列不正の種類や発生の原因を知って予防・治療を考えましょう。
歯列不正とは歯の位置がずれている状態の総称
歯列不正とは、歯並びが悪いことが原因で噛み合わせに異常(咬合異常)が発生している状態のことをいいます。
歯列不正は子ども~大人まで、年代を問わずに発生する症状です。
乳歯列期(生後6カ月~6歳くらいまで)の歯列不正
乳歯は生後6カ月くらいから生え始めて、2歳半くらいまでにそろいます。
そこから永久歯が生え始めるまでの間が「乳歯列期」です。まだ小さな歯ですが、この時期にも歯列不正は発生します。
「永久歯に生え変わるから」と放置するのはよくありません。
歯の土台や顎の形が正しくないまま成長し、永久歯にも歯列不正が発生するリスクがあるからです。
混合歯列期(6歳~永久歯が生えそろうまで)の歯列不正
6歳頃から永久歯が生え始め、乳歯と永久歯が混ざる「混合歯列期」に入ります。
この時期は歯と歯の間に隙間ができるのが普通で、永久歯が生えそろえば解消することが多いです。
永久歯が生えてからも気になる歯列不正や咬合異常がある場合は歯科医院に相談するとよいでしょう。
成長期(12歳~18歳ころまでの歯列不正)
永久歯が生えそろうと、乳歯列期からの歯列不正が顕著に表れることが多いです。
また、下顎も急速に成長する時期で、それまではなかった受け口の症状が見えてくることもあります。
成人(18歳以上)の歯列不正
歯周病や虫歯によって歯を失ったり、智歯(親知らず)の影響を受けたりして、大人になってからも歯列不正が発生することも。
前者は治療しないと歯列不正が悪化しやすくなるため、早急な対処が必要です。
歯列不正の種類と原因
歯列不正には主に4つの種類があります。それぞれの特徴と原因を見ていきましょう。
叢生(そうせい/乱ぐい歯・八重歯)
歯が重なって生えており、歯列が凸凹になっている状態のことをいいます。
厚生労働省の調べによると不正咬合の中で43%を占めている症状で、最も患者数が多いです。
八重歯も叢生の1つですが、チャームポイントとしてそのままにしている人も見られます。
叢生の代表的な原因は、次のとおりです。
- 顎の発育が不十分である
- 歯と顎の大きさがアンバランスになっている
- 乳歯の不正咬合や虫歯により永久歯が正常に揃わなかった
- 両親から小さな顎と大きな歯をそれぞれ受け継いでいる
上顎前突(出っ歯)
上顎前歯が下顎前歯よりも前方に突出している症状です。上顎全体が前に出ているケースと、歯茎の傾斜が強いケースがあります。
日本人は後者の歯茎の傾斜が原因で上顎前突になっていることが多く、治療が比較的楽です。
上顎前突の代表的な原因は、次のとおり。
- 口を開く癖があり口呼吸が多い
- 子どものころに指しゃぶり癖があった
- 遺伝的な要因
指しゃぶりの癖に加えて、舌で前歯を押してしまう癖も上顎前突の大きな原因になります。小さな力でも継続的に加わると歯並びに影響しますので、見つけたら早期に改善しましょう。
反対咬合(受け口)
上顎前突と反対の症状で、下顎が突出している状態です。正しい噛み合わせでは、噛み合わせたときに上の前歯が前にきますが、反対咬合では下の前歯が前に出ます。
反対咬合の原因は、次のとおりです。
- 子どものころに指しゃぶり癖があった
- 遺伝的な要因
- 上下の顎がアンバランスに発育した
上顎前突と似た原因が目立ちますが、反対咬合は遺伝的な要因が強いとされており、両親や兄弟に同じ症状の人がいると発生する可能性が高まります。
開咬(オープンバイト)
正常な噛み合わせでは、奥歯を噛み合わせると前歯も自然と閉じます。しかし、開咬ではそれがうまくいかず、常に上下の前歯に空間がある状態です。食事の際に顎の筋肉や関節に負担がかかるため、半数以上の患者が顎関節症を併発しています。
開咬の原因は、次のとおりです。
- 前歯の発育が不十分
- 全体的な歯並びの問題
- 指しゃぶりや舌癖による負荷
- 遺伝的な要因
聞きなれない症状かもしれませんが、10人に1人くらいの割合で開咬の傾向があるとされています。
歯列不正を放置するリスク
歯列不正は容姿の悩みになりやすいだけでなく、次のようなさまざまな問題を抱えるかもしれません。
食事がうまくできない
噛み合わせが悪いと咀嚼が十分にできず、嚥下障害が発生することや消化器官への負担が増えることが考えられます。
食事の際に口からこぼしたり、食べ方に特徴が出たりする可能性も高まるのです。
発音や呼吸に障害がでる
反対咬合や開咬の症状が大きいと、発音が正常にできない、息が漏れるといった症状が発生します。
年頃になると見た目に加え、これらの症状が気になって自信を失う子どもも少なくありません。
顎の関節や筋肉に負担がかかる
前歯を使って食べ物を噛み切れないと、奥歯を使って食事をする必要があります。
その結果、顎の関節や筋肉への負担が増えるので、顎関節症をはじめとしたトラブルが発生しやすいです。
虫歯や歯周病になりやすくなる
噛み合わせが悪い歯は歯ブラシで磨けない隙間が多く、そこに歯石が溜まりやすくなります。
虫歯や歯周病発生のリスクも高まり、口臭に悩む人も多いです。
歯列不正の治療法
歯列不正を治療する場合は歯列の矯正を中心にいくつかの方法から選ぶことになります。
費用や重視したい点を考えて選びましょう。
ブラケット矯正
一般的な歯列の矯正方法は「ブラケット」という矯正器具を歯の表面に固定し、そこにワイヤーを通します。ワイヤーの力によって歯を正しい位置に戻すため、痛みが出やすいですが一般的には数日で治まる場合が多いです。
ブラケットには、金属製のものと審美性を重視した樹脂やセラミック製のものがあります。
金属製ブラケットは目立ちやすいですが、矯正治療の中では費用を抑えやすい方法です。
審美性の高いブラケットは金属製よりも費用が高くなりますが、目立ちにくいため女性や接客業の人に人気があります。
いずれも治療期間は2年前後です。
マウスピース矯正
マウスピース矯正では、矯正の段階に合わせたマウスピースを装着し、少しずつ理想の歯並びに近づけていきます。ブラケット矯正と同じように、外部からの圧力で歯を正しい位置に戻す治療方法です。
マウスピース矯正は自分で取り外しが簡単にでき、目立ちにくいのが大きなメリットになっています。
また、痛みも比較的小さく、負担の少ない矯正が可能です。ブラケット矯正よりも費用が高くなり、重度の歯列不正には適していません。
いのうえまさとし歯科医院では「インビザラインGo」という審美性を追求した目立たないマウスピース矯正を採用しています。
前歯部の矯正に特化したマウスピースです。
部分矯正
部分矯正は一部の歯を矯正するときに選ばれます。
ブラケット矯正が基本ですが、ブラケットを付ける場所が少ないことや、歯の裏側にすることも可能なため、目立たない矯正ができる方法です。
費用も安く、比較的気楽な矯正として選ぶ人もいます。
外科的な治療
矯正治療では対応できない歯列不正の場合は、外科的な治療が必要です。
とくに上顎や下顎の位置や大きさに問題がある場合は外科手術も視野に入れなくてはいけません。
患者様のご意向を確認したうえで決定します。
歯列不正の治療は早期に始めるのがおすすめ
歯列不正は大人になるほど治療に時間がかかります。
体にかかる負担も増えるため、気になったら早めに治療を行うのがおすすめです。
近年は目立たない矯正治療や痛みが少ない矯正治療も増えました。日常生活に支障を出さずに改善することもできますので、ぜひご検討ください。
この記事の筆者
いのうえまさとし歯科医院
京都の「いのうえまさとし歯科医院」はインプラントを得意とする歯科医院です。20年間で7500件以上の治療実績があり、大手インプラントメーカー2社の公認インストラクターである院長が、あらゆる症例のインプラントのご相談を承ります。
またマウスピース矯正、ホワイトニング、一般歯科など幅広く対応しております。
いのうえまさとし歯科医院へのアクセス
京都市営地下鉄烏丸線「北大路駅」より徒歩20分